通勤

毎朝使う野江駅は小さい駅なので、改札のあたりに電光掲示板などはない。上のホームから聞こえる電車の音で、電車が来ているかどうかがわかる。しかし音だけでは、1番線に来ているのか2番線に来ているのかはわからない。
僕が求めているのは2番線の中之島行きだ。
改札に向かう時、古いコンクリートのアーチ天井が揺れて、電車が到着する音が聞こえる。薄暗い通路を2番線に向かって走るおばちゃんが見える。すかさず僕もおばちゃんを追いかけるように2番線に向かって走った。野江に停まる京阪各駅停車は少ない。
これを逃すと遅刻する。
長い通路を走って階段に向かう。おばちゃんとほぼ同時にホームに駆け上がった。

電車は来てない。
逆側の1番線に来ていた。
おばちゃんが息を切らしながらこちらを見て、照れたような笑みを投げかけてきた。

んまあ、なんてかわいいのかしら。

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